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田母神前航空幕僚長事件

日増しに拡大する田母神前航空幕僚長事件。事件が今ひとつ重要に思われていないようなのは、一つには肩書きである「幕僚長」がピンと来ないからだろう。

「幕僚長」というのは要するに空軍大将のことで、航空自衛隊のトップである。そのトップがこのような事をしでかしたのだから、本来は大問題なのである。

何が問題かというと、一つは軍の侵略性の問題。侵略行為だったと衆目が一致している先の戦争について、「いや、あれは侵略ではなかった」と空軍のトップが明言することは、自衛隊は平気で侵略を行う組織であるという疑念を、内外に持たせてしまう。


次に、村山談話という政府見解に反した持論を展開し、それに執着して政府を非難する有様は、civilian controlの観点からも問題がある。何となれば、軍人が己の意見に固執し、政府を押しのけて暴走したのが、先の戦争の一因だったからである。

氏は「自由に意見を発表できないのは、北朝鮮と同じ言論弾圧だ」と政府批判を強めており、それに同調する論調もあるが、それは大きな誤りである。というのは、北朝鮮は誰でも政府批判をすることは許されないが、日本では公務員でなければ、誰でも政府批判をすることができるからである。

公務員の自由が制限されているのは、公共の福祉に反するからであって、人権違反ではない(それが厳密に裁定されている限り)。たとえば公務員にはストの自由はないが、それは彼らのストライキは市民に多大な損害を与えるからであって、人権弾圧とは言えない。

同様に、空軍のトップが政府批判することは、国情を乱し、海外からもつけこまれることから、公共の福祉に反するのである。日本は政情が安定しているから良いものの、これが不安定な国ではクーデターや内乱騒ぎにまで発展することは、歴史の示すとおりである。


侵略性、反文民支配の二点だけでも大問題だが、この事件ではさらに民間企業との癒着も批判されている。

表面上は「アパグループの懸賞に応募した田母神氏が受賞し、賞金300万円を獲得した」だけに見えるが、詳細が見えてくるに従い、ことはそう単純な問題ではないことが分かってきたのである。

まず氏の論文はきちんと書かれたものでなく、メモ程度のもので、通常なら受賞できない類のものだったこと。それが受賞できたのは、これが出来レースだったことを窺わせる。

つまりアパグループは300万円というワイロを賞金という形で氏に手渡し、氏に様々な便宜を図ってもらったという疑いだ。

もっとも、ワイロなら被害は軽いとも言える。より恐ろしいのは、思想的結託だ。アパグループのトップは、氏と同じく保守主義者として知られる。今回の騒動は、両者が示し合わせ、懸賞論文という枠組みを利用して、修正主義的なアピールを行ったものと考えるのが自然だ。

自衛隊と民間企業が思想的に結びつき、政府批判を繰り返すというのは、クーデターに後一歩な構図である。

アパグループの懸賞には、他にも自衛隊員が数十名も応募していたという。組織ぐるみの癒着が疑われる。


最後に、このような発言は、日本の外交力を損なうという問題がある。

昨年、米議会が日本政府への慰安婦非難決議案を検討していたさい、日本政府は米紙に「慰安婦は存在しなかった」「日本政府は何ら関与していない」という広告をうち、逆にアメリカ人の怒りを買って非難決議を成就させてしまったという事件があった。

恐ろしいことに、日本政府は、海外における日本のポジションというものを弁えていない。国内では「一見」正しそうに見える意見も、それを言うと顰蹙や反感をかってしまうということを、理解していない。

それどころか、「反感をかっても正義は貫かれなければならない」とばかり、持論に固執する。その姿を、我々は田母神氏の中に見てしまう。

憲法改憲、歴史認識。なるほど、氏の主張は正しいのかもしれない。だが仮に正しくとも、それを自衛隊幹部が言うことは、海外での反日機運を盛り上げることにしかならない。それに固執すればするほど、日本の外交力は失われていく。

国益を守るはずの自衛隊が、逆に国益を損なわせるのだから、皮肉としか言いようがないのである。

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ちょっと違うかも知れませんが、今回の一件は2・26事件を思い出しました。

自衛隊幹部がこういう形で話題を提供してくれたのも、また国内でもあまり大事のように思われていないのも、結局は軍事的なものに対する国民の無関心や蔑視が根本的な原因になっていると思います。

本来なら言ってはいけないことを言うことで「自衛隊ここにあり」ということを示す意味合いもあったように見えます。もちろん捨て身で、討死覚悟ではあったと思いますが。

そうですね、根っこは繋がっている部分があると思います。両者は共に熱心に、真面目に日本国の将来を憂えて、ああいう自爆行為に打って出たのでしょう。

ただ
>軍事的なものに対する国民の無関心や蔑視が根本的な原因になっている
という部分は、10年、20年前に比べると、かなり改善されてきたと思います。防衛庁から省へ格上げされたし、海外派兵への賛同者も増えたし、何より自衛隊そのものが合憲的存在と認められるようになってきた。

正直、これ以上何を望むのか、という所ですねw。

氏は自衛隊から侵略者というイメージを除きたいようですが、そもそもそのために、「自衛隊」という新しい組織を作ったのであって、そこへわざわざ旧日本軍の美化を始めたりすると、結局「自衛隊はやはり旧軍と同じ穴のムジナであったか」という印象を内外に与えてしまう。

国策的に見ても、余り賢い戦略とは言えない。はっ。実は自衛隊のイメージを失墜させるために、仕組まれたワナかもw。
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