スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

長い間

駅を降りるとこわいような強く、おだやかな生き物のにおいが押し寄せてくる。

わたしは戸惑い、歩いていく方向さえ分からなくなりかけたが、すぐにそれが潮のにおいと気づいた。そういえば、長い間、わたしは海に来なかった。

じつに、長いあいだ。

町の片隅で捩れたようにうねっている海は、海でないような素振りをしながら、そのくせ隙を見せれば、たちまち、わたしのからだを濡らそうとたくらんでいる。

濡らされたわたしのからだは、ねっとりした感覚をもてあましながら、砂浜を歩きつづける。

わたしの一部は海を恋いねがいながら、またべつの部分で海を激しくきらっている。

その駆け引きにしたがえば、わたしは波打ち際を歩くことになる。波はわたしをさらおうと待ちかまえ、わたしの中のいきものはその波を追いかけようと、飛び出しにかかる。

それを抑えるのにわたしは必死だ。必死でありながら、わたしはそれを待ち望んでもいる。海は魅力的だ。そして魅力あるものは、すべて恐ろしい。

だからこそ、わたしは長い間、海から遠ざかろうとしてきたのだ。

じつに、長いあいだ。

テーマ : 詩・想
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

No title

 Lepさんも小説書くんだっけ?もし書いているのなら読んでみたいな…。
 この文章、凄く懐かしい感覚がある。Lepさん作?他の人の作?

No title

>Lepさんも小説書くんだっけ?
http://taiwan-house.seesaa.net/
の方で、鄭成功物語を連載しているので、ヒマがあったら覗いてみてください。父が書いたのを私が推敲しているので、私が書いているわけではないのですが。

「長い間」の方は、自作です。先日お台場行ったのを思い出しながら、書きました。
ブログ内検索
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
RSSフィード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。