スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

流線型伝説

流線型伝説―鉄道車両進化の系譜 (のりもの選書)流線型伝説―鉄道車両進化の系譜 (のりもの選書)
(2005/01)
池田 邦彦

商品詳細を見る


20世紀初頭、航空機に採用された新デザイン「流線型」が、日本の鉄道車両に与えた変化を追跡していった好著。作者の著述をまとめれば、

アメリカの航空機
    ↓
ドイツのフリーゲンダー・ハンブルガー
    ↓
アメリカのゼファー
    ↓
満鉄あじあ号
    ↓
C53流改
    ↓
EF55ムーミン
    ↓
関西急電モハ52型・流電
    ↓
小田急SE
    ↓
こだま型

と流線型が受け継がれ、日常化していくことになるが、海外のに比べると、戦前の日本の流線型車両は不恰好で、おどおどと流線型の世界に踏み入れたような感じがする。



瀬戸大橋からプリウスまで、世界に冠たる製品を作り上げてきた日本の技術だが、その実態は意外と保守的である。

日本車には画期的な新機軸が盛り込まれることはすくなく、既存技術をギリギリまで磨き上げることで、競争力をたもっている。そのボディは極限まで薄くされ、押してみると凹むほどだ。

土木においても、斜張橋、NATM工法など、画期的な新技術はたいていが海外で開発され、日本ではそれらの新技術の安全性が確認されてから、やっと使い始めることが多い。

このような「前例がなくして採用せず」という発想は、おそらく明治以後の西洋技術の導入によって培われたものだろう。明治の技術者たちは西洋に前例を探し、豊富に前例がある技術だけを、選択的に採用したのだから。

日本が後進国だった時代はそれでも良かったが、現在のように先進国になっても同じ思想ではやっていけない。常にフロンティアは形成され、前例がまったくない状態が眼前に提示されてもなお、「前例がない」といい続けている人は、技術方面だけでなく、経済や社会にもすくなくない。

日本衰退の一因は、ここにもあるのである。


もっとも保守性は日本人のDNAではなく、環境のせいだろう。というのは、同じ日本人の経営になる満鉄と鉄道省をくらべてみると、満鉄の革新性が際立つからだ。

満鉄は鉄道だけでなく、道路や電気、ガス水道など、広く満州のインフラを整備するために設けられた国策会社だが、当時の満州には、理想に燃える日本人が集まったといわれる。

1930年代、世界は未曾有の大不況に襲われていたが、共産主義ソ連だけは、その不況とは無縁であった。そのため日本でも共産主義の人気が高まったが、当局はこれを弾圧。インテリ青年の中には、新天地をもとめて満州に旅立った人もすくなくない。

日本軍の力を借り、現地民を抑圧しなければ新天地が創造できなかった点に、日本の進歩運動の限界をみるが、とにもかくにも、満州の地に日本の革新勢力が結集したわけである。

その結晶たる「あじあ号」を見ると、日本人でも状況が許せば、画期的なデザインや技術を採用するのだな、と思わせられる。

実際、八木アンテナに見られるように、戦前、すでに日本では英米に先駆けてレーダーの研究開発が行われていたが、軍部はその重要性を理解することなく、結果としてレーダー開発に失敗。ミッドウェーの大敗を招く遠因となった。

日本人には、むしろ突飛な発想がおおいのだが、それを製品化するとなると、保守的な組織に阻まれて潰れてしまうケースが多い。まあ、もともとの「突飛な発想」自体、おそらく保守的な組織への反発から生まれているのだろうから、単純に組織を開化せよ、というわけにも行かないのが厄介なのだが。


止まれ、この「あじあ号」はその悲劇的な最期(日ソ戦~国共内戦で運行停止、損壊)も相まって、今なお名機と謳われる特急列車だが、作者がいうほど、日本人独創的なものではない。

なるほど、流線型デザインの採用は先駆的だが、前例としてハンブルガーやゼファーを参考にしている。

また著者はfish tailこと、密閉型流線型展望車を日本が世界に先駆けたもの、と絶賛しているが、これは事実誤認だろう。というのは確かに営業運転ではあじあ号の展望車のほうが先だが、試作・試運転としては、アメリカのプルマン客車やゼファー展望車のほうが前だからである。

最近の日本では自国技術への礼賛が目立つが、それも過ぎると盲目的になるという好例だ。

とはいえ、全般的にこの本はよく書けており、本職は模型屋というが、下手な分泌家よりも、文章はうまい(もちろん、編集部の努力もあるだろうが・・・)。流線型車両の流れや時代背景もポイントよく押さえてあるので、入門書にはわるくないだろう。

テーマ : 鉄道
ジャンル : 趣味・実用

コメントの投稿

非公開コメント

ブログ内検索
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
RSSフィード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。