スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

とろける鉄工所

とろける鉄工所 2 (イブニングKC)とろける鉄工所 2 (イブニングKC)
(2009/03/23)
野村 宗弘

商品詳細を見る


たぶん佐々木倫子の「動物のお医者さん」が先鞭だったと思うが、世間一般に馴染みのうすい職種をテーマにすえるという漫画の描き方があるが、「とろける鉄工所」も、その伝統の上にある。

なにしろ鉄工所である。何をするのか?鉄を作るのか?鉄を加工するのか?鍛冶屋か?キューポラよりも、さらに普通の人には馴染みがないであろうこの世界を、のぞいて見たくない人は少ないだろう。

そしてこの本を手にとってみるわけだが、そこでは聞きしにまさる恐るべき世界が繰り広げられている。
「溶接光で目を焼く」、
「針金に黒目を貫かれて失明」、
「機械に切断されて指を喪失」、
「鉄粉を吸い込んで塵肺」、
「火の玉が背中に入ってカチカチ山」、
「鉄骨の下敷きになって鼻がもげる」
・・・

想像するだけで戦慄するようなエピソードが、これでもか、これでもか、と投下されるのだが、不思議なことにあまり恐怖感はない。それはこの作品が基本的にコメディで、絵柄もホンワカとしたものだからだろう。

失明した作業員も、「あ、さよか」と、まるで爪でも剥がれたかのように、あっけ羅漢としている。。。考えてみれば、かつての日本では、このような「悲惨」な労働環境があたりまえだったのだが、時代のほうがそれを許さなくなったわけである。

ところが鉄工所のほうでは昔のままに時間が流れているので、現代とのミスマッチがおかしさをかもし出すことになる。つまり、根っこのところで、この作品は「三丁目の夕日」につながるものをもっている。郷愁性とまで言っては言いすぎだろうが、郷愁を外側からみたような、ほのぼの感がある。


また秀逸なのは、キャラクター設計がきちんとなされていることだ。

鉄工所の4人の作業員がメイン・キャラクターなのだが、それぞれ「昔かたぎの職人」、「元ヤクザのム所上がり」、「頼りがいのない新人クン」、「中堅作業員=主人公」ときっちり色分けされており、そこに鉄工所独特の作業ネタが放り込まれて、あとはそれを中心に自動的に各キャラがうごきだす。

この仕掛けは、実に安定的で、長期連載の兆しさえみえる。

またホヨホヨ感溢れる主人公の妻(福満しげゆきの描く妻に似ている)、頑固職人の父を支える娘、太陽戦士サンレッドのような(人は良いが、どこかずれた)社長、など、湧き焼くも手を抜かずに描かれており、物語のリアリティをたかめるのに成功している。

とはいえ、無理やりに感動話にまとめようと、妻や娘の涙ぐむようなエピソードを投入するのは、かえって読者を白けさせてしまう。

「三丁目の夕日」が土臭い感動話の連続でも許されるのは、その泥臭く派手な絵柄や、昭和30年代という虚構の世界や、手っ取り早く感動をもとめたい読者層などがあるためである。

一方、結構洗練された絵柄で、現在という世界設定、笑い(と好奇心)をもとめる読者層がターゲットという「とろ鉄」では、不用意な感動話は不整合な印象をあたえかねない。

泣かせるとしたら、笑いの中で一瞬だけ、刺すようにペーソスを流し込むべきだが、そのような芸当はかのチャップリンでもなければ、難しいのだろう。

コメントの投稿

非公開コメント

ブログ内検索
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
RSSフィード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。