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「常識」の研究

「常識」の研究 (山本七平ライブラリー)「常識」の研究 (山本七平ライブラリー)
(1997/05)
山本 七平

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「常識」の研究、山本七平。
山本七平。現在では聞くことも少なくなったが、イザヤ・ペンダサン名義で出版した「日本人とユダヤ人」で有名になり、1970-80年代に文壇を席捲した批評家である。

その口調は分かりやすく、鋭い。「中国太平洋岸が世界経済の中心となるだろう」「日本は左翼も右翼も反米ナショナリズムである」「教育改革会議に、教育専門家を入れるべきでない」など、その発言は今でも十分に通じる警句的なものがある。

ただ晩年になるに従い、その筆致は権威主義的で過剰修飾に偏っていき、初期の鋭さや明快さを失って行った点は残念である。

また元来、出版界に身を置いて独学で批評活動を続けていたせいか、その思想は分かりやすいものの、ともすると独善的で、浅薄なキライも見受けられた。一つの観点「常識」から日本人を掘り下げよう、というのがこの著作の目的でもあるのだが、結局種々の考察が十分焦点を結ばないまま、浮遊し続けるというエッセーに終わってしまった印象がある。

歴史に残る著作とは、浮遊をしながらも、人間真理の奥に深く刺さるものを持っているのだが、残念ながら彼の著作には、そのようなものは感じられなかった。



とはいえ、朝鮮の役で捕虜となり、日本に連れてこられた姜の「看羊録」の下りは面白かった。姜によれば、日本人は抽象的思考に弱く、中国の学生程度の講義すら珍重するが、その反面、便利と思ったものはいち早く導入する、という。

無駄なイデオロギー論争を廃し、まずはやってみるという実践精神に培われた戦国時代の日本人精神を的確に表した記録だが、そのような優れた精神は、戦後も80年代ごろまでは、日本に残っていたと思う。

欧米では見向きされなかったQC運動やロボット化をいち早く導入し、「Japan Brand」を確立。冷戦の間に立ちながら、平和憲法を盾に軽武装を貫き、イデオロギー論争を学者内にとどめ、所得倍増に邁進して実を取る姿は、戦国時代の日本社会と重なる。

しかし90年代以降、日本は「日本原理主義」とでも言うべきイデオロギーに虎我、袋小路にはまり込んでしまったように見える。武士道、国家の品格、女性の品格、サムライ精神・・・語れば語るほど、当人は自慰的になり、世界の荒波から取り残されて行く。

戦国時代の朝鮮や、70年代の中国ではイデオロギー論争が盛んで、実践的なことは疎かにされていた。朝鮮では名分論という、朱子学に基づいた統治権の正当性を巡る議論が、中国では共産思想と儒教が奇妙に融合した毛沢東思想が、それぞれ席捲していた。

その結果、朝鮮は日本に征服され、中国は餓死者2千万と言われる悲惨な状態を招いたとされる。

しかし今や状態は逆転し、日本は日本至上主義に迷い込み、没落の一途を辿っているのに対し、共産主義でありながら資本主義まっしぐらの中国では、思想そっちのけで経済発展が過熱している。

日本が間違っているとしたら、それはやはり頭でっかちになって、すぐにやろう、何でもやってみよう、という実践力が衰えているという点に尽きるのだろう。

テーマ : 書評
ジャンル : 本・雑誌

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 >歴史に残る著作とは、浮遊をしながらも、人間真理の奥に深く刺さるものを持っている⇒人との付き合いも同じだなぁ~と思いました。そういうのが出来なくなったのは、何か人間的に変化(心に)が生じたかも知れないね。
 >間違っているとしたら、それはやはり頭でっかちになって、すぐにやろう、何でもやってみよう、という実践力が衰えている⇒あたい、やるずらよe-271e-282!!!

はじめましてo(^-^)o

✿ฺ・:*:・✿ฺ ・:*:・・:✿ฺ ・::*:・✿ฺ・:*:・✿ฺ ・:*:・・:

  ご訪問ありがとうございます!

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あ、これは前に読みました。でも個人的には『空気の研究』の方が印象深かったので、途中で止めちゃいましたけどね。

論文集というよりもエッセイ集のような感じがして、一番読みたい「常識の研究」はいつになったら出てくるんだろう、と思いました。

山本さんの文章は判りやすいのですが、それが書かれた当時の社会の空気がよく分からないと、今の感覚では掴みにくい部分がありますね。新聞の批評欄のような感じです。

>そういうのが出来なくなったのは、何か人間的に変化(心に)が生じたかも知れないね。
そうすね~日本の場合、形式主義というか、外観、言葉遣いに拘り過ぎて、心からの付き合いができなくなっている気がします。

>あたい、やるずらよ
思い立ったら吉日、にこさんなら独立してカキカキできると思いますよ。

>当時の社会の空気がよく分からないと、今の感覚では掴みにくい部分がありますね
以前、古新聞を読んでいたんですが、昭和30年代、40年代の雰囲気がつかめて面白かったものです。当時はイデオロギーや思想的な物言いが多かったんですが、湾岸戦争以後は次第に経済的、保守的な発言が目立つようになりましたね。
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