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サブプライム後に何が起きているのか

「サブプライム後に何が起きているのか」、春山昇華、宝島社新書、08年。

「サブプライム問題とは何か」の続編。感想としては「良くまとまっているが、食い足りない」w。
どうしてサブプライム問題が起きたのか。作者の見解によれば、犯人は「証券化」にあるという。つまり本来貧困層の借金という劣悪な債権を、証券化という化粧でごまかして世界中に売りつけた、ということ。

証券化を通すと、なぜ化粧ができるかと言えば、それは格付け機関がサブプライム証券にAAAを付けたからである。そしてそれを信用した投資家らは、深く調査もせずにどんどんとサブプライム証券を買い漁った挙句、破局を迎えた。

そのため、現在では格付け機関の甘さや故意性が盛んに批判されているが、格付け機関といえども全く無根拠にtriple Aを付けたわけでもない。そこにはモノラインという根拠が存在した。

モノラインとは質の悪いサブプライム債権に、保証を与える装置である。仮に返還が滞っても、モノラインが代わりに払ってくれるため、外から見ると、サブプライム+モノラインという証券は、十分に安全な債権のように見えるのである。



そのやり方自体は、別段違法でもないし、債務者がきちんきちんと払っていれば、破綻することもなかった。

ところが問題は「債務者が払いきれなくなった」という点にあった。

元々サブプライムローンは高目に設定されているのだが、2,3年過ぎると一気に金利が高騰するようになっている。このローンはそもそも低所得層向けのものだから、当然債務不履行に陥る人が続出するのは眼に見えている。

ところが、借りる側も貸す側も、そのことに眼を瞑ってローンを売買しまくっていた。日本人的感覚からすると不思議なことかもしれないが、アメリカ人の感覚からすると、金利があがる前に、低レートのローンに借り替えればいい。もし駄目でも2,3年後には不動産価格は上昇しているから、土地を担保に借金もできるし、最悪どうしようもない場合でも、売却すれば損はしない、と言うことになる。

貸す方も貸す方で、ローンを売った後は、そのローンを証券化してすぐさま現金を得ることができたから、ローンを売れば売るほど儲かることになり、少々無理な相手にも強引に売りつける商法が横行した。

以前ならローンを売った会社は、それを自分で回収しなければならなかったから、そうそう大量のローンを販売することはできなかったし、回収の見込みが薄い相手にローンを売りつけることも(結局自分が損するから)できなかったのだが、「証券化」という仕掛けがその自己規制を解除したといえる。



そして破綻は土地価格の下落と共に始まった。アメリカ、特にカリフォルニアの土地需要は活発だが、それでも供給が過剰になればいつかは下落する。

そして下落が始まると、歯車は逆転するようになる。

まず土地価格の上昇を見込んだ借金はできなくなり、債務者は返済不履行に陥った。土地を売ろうにも価格が急激に下がる中では買い手がつかず、債務を回収することも不可能になった。

その中で多くの金融機関が破綻したり、経営危機に陥り、金融不安が発生。不安は実経済にも影響を及ぼし、原油高・食料高とも絡んでアメリカの景気は冷却した。



と、サブプライム破綻の説明は、多くの識者が語っているだけあってか、この著者の記述も明快で分かりやすい。

だがその後は、論旨も不明瞭で、著者自身の希望的観測や思い込みを述べただけ、という文章が少なくない。

例えば著者はアメリカが衰退し、中国が次の覇権国になると予測するが、これなども昨今流行の中国台頭論に乗っただけのように見える。彼はその理由として、アメリカから遠く、サブプライムの影響がない国は中国だけだから、とするが、インドもロシアもその資格はある点を見落としていないか。

確かに中国は世界の工場にまで成長したが、四川地震一つとっても、その足元は意外に脆弱である。四川地震では多くの小学校が倒壊したが、それは手抜き工事が原因と言われる。このようなモラルハザードは建設業者だけでなく、毒ギョーザ事件に見られたように食物業界でも、また共産党内でも横行している。

貧富差の拡大も大きな社会問題だ。中国では年金、医療保険が完備していないため、貧困層は満足に医者にかかることもできない。もともと貧者を救うために出現した共産党が、今では貧者を抑圧しているのだから、自己矛盾がある。政府は力で抑え込んでいるが、そのようなやり方は暴発する可能性が高い。

また一人っ子政策の中国では、少子高齢化は大きな問題となる。実際、2015年には生産年齢層の縮小が始まり、世界の工場の座が揺らいでくる。

それに追い討ちをかけるのが、独自技術の乏しさだ。中国の生産技術はキャッチアップの磁器を過ぎ、独自開発の域に入っているが、中国では日本やドイツのようにコツコツ努力を積み重ね、技術開発を積み重ねていくという伝統に乏しい。才能ある若者は金儲けに邁進し、地道で報われにくい研究開発を敬遠しがちという。



一方、日本ではアメリカ衰退論が盛んだが、自分が見るところ、アメリカはしぶとく生き残るように思う。

一つには、アメリカは多民族国家であり、その発想の多様性と、プラグマティズムに裏打ちされた変革精神があるからである。

なるほど、太平洋戦争時も当初アメリカは連戦連敗だったが、敗因を分析し、それをカバーする方策を打ち出して、最後には日本を圧倒した。

今回も連銀は矢継ぎ早に利下げを繰り返し、金融不安を払拭させ、政府も戻し減税でこれを支援した。

先端産業-IT、バイオ、航空宇宙、金融工学では、なおも世界1,2の強国であり、先進国では唯一の高出生率を持つ国でもある。

それを可能にしたのは、新しいものをいち早く受け入れる先取の風土にあり、起業を可能にする人々の信頼関係である。それらがある限り、アメリカは何度でも蘇るだろう。



逆に言えば、日本が衰退に向ったのは、日本から先取の精神が失われてからである。

90年代までの日本には、それがあったと思う。新しいことは、善悪の神学的な判断抜きに、とりあえず採用し、使ってみるという度量があったように思う。QCから自衛隊まで、「とりあえず取り入れてみる」という精神は、日本に多くのメリットを与えた。

しかし90年代以降の日本は、新しいものに及び腰で、機会を捉えてはそれを拒否する習性がついてしまったかのように見える。ホリえもん叩きから中国食品締め出しまで、些細なミスを捉えては色々なチャンスを自ら潰しているかのように見える。

ホリえもんなど、叩かなければなおもIT長者が続出し、それに課税することで、消費税増税を回避できたかもしれない。

この点については、作者も言及しており、もっと企業に有利な環境を作り出すように提言している。

サブプライム後に何が起きているのか (宝島社新書 270) (宝島社新書 270)サブプライム後に何が起きているのか (宝島社新書 270) (宝島社新書 270)
(2008/04/09)
春山昇華

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