2009.06.  12345678910111213141516171819202122232425262728293031 2009.08.
ichi ithy
「女座頭市」こと、「ICHI」を見に行く。感触としては砂糖市というより、「あずみ」。美少女を主人公としていることで、「あずみ」の二番煎じをしていると、見た。

しかしあまりに酷い作品に仕上がってしまった。

一つには、ヒロイン(綾瀬はるか)の演技が下手すぎる。女剣士としての体裁きは優れているが、それを無意味にするほど、台詞回しが拙い。語尾がぼそぼそ、となってしまうのは、薄幸の少女という演出でもあるようだが、それよりも、まともな日本語発音が出来ていない可能性のほうが高い。

脇役である虎次(窪塚洋介)も酷いものだ。そのエキセントリックさ丸出しの風貌は仁侠団体の生き急ぎ若親分として評価はできるが、演技が浅い。犬が吠えるようなタンカしか切れず、まるで池袋西口で拾ってきたチンピラを、そのまま映画にぶちこんだかのよう。

ヒーローの若剣士(大沢たかお)の演技は一応見れるが、金を取ってまで見せるほどの演技でもない。純朴な青年という設定なのだが、なんと言うか、切れが悪いというか、その純朴さが鼻について仕方がない。

もっともこれは彼のせいというよりは、台本のせいだろう。世間ずれしたヒロインに配し、純朴なヒーロー。こういう設定はデフォルメが効いたマンガなら許されるが、実在の事物しか写せない映画では、よほど上手に演技しないと滑稽になってしまう。(まあ、大沢の演技力がそれに追いつけなかった、ということでもあるのだが)

散々なキャストのせいか、日曜の都会にして、映画館はがらがら。250席ほどの室内で、埋まっているのは10数席ほど。しかも最後烈の一人は掃除のおばさんらしく、横に箒をおいて、弁当などを食っている。

その室内を盛り上げようと、やたら音楽が無理矢理がなり立てられるが、外国産なせいか、どこか画面と合わず、気持ちも盛り下がる。

唯一、気炎を吐いていたのが敵役の中村獅童。何が良いかというと、その発声がいい。きちんと腹から声を出していて、迫力がある。声帯だけで声を出そうとしていた他の出演者に比べると、その違いがよく分かる。

声の出し方も、劇のリズムに乗っていて、劇の呼吸を体で知っていることをうかがわせる。窪塚洋介とさほど歳は変わらないはずだが、やはり幼い頃から演劇をしていた者は違うということか。

いや、幼いころからやってはいても、安達祐実 や、えなりかずきの演技はうまいとは思えないから、やはりこれは太鼓や謡を交える歌舞伎によるものだろう。思わぬところで、伝統の強さを知る。

株主優待ででもなければ、見に行かなかった(そしてそれが正解な)映画だったが、光るところも無かったわけではない。座頭市から譲り受けた、障害者、貧困者、孤児としての和な暗さ、やるせなさや、美少女剣士という設定は、上手に扱えば化ける可能性がある。

おそらく監督もそこに賭けたのだろうが、惜しむらくは、上手に扱える役者に恵まれなかったことであった。
2008.12.02 (Tue) 01:06
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